組織を率いるリーダーはどんな行動が求められるのだろうか?
前回、優れたリーダーの特徴・特性について紹介しました。
特性理論においては、リーダーは先天的な能力に依存するのではないかという前提がありました。
しかし、もしリーダーに必要な「行動」が特定できれば、リーダーを育成する可能性が開けてきます。
そこで後天的に習得可能なリーダーの行動を探った研究理論として「行動理論」が誕生しました。
本日は、この行動理論を通じて、リーダーに求められる行動が何であるかについて紹介します。
リーダーの効果を測る2つの行動軸
リーダーに求められる行動については数々の研究がなされ、様々な表現方法によって示されていますが、いずれも以下の2点に集約します。
管理者が発揮すべきリーダーシップの機能
- 構造づくり=課題志向的行動
- 配慮=人間関係志向的行動
構造づくりは仕事中心のリーダーシップで、組織目標達成に向けて課題を捉え、構造化し、達成に向けて推進する行動となります。
【行動例】
- メンバーの行動の方向づけ
- 仕事手順や役割の明確化
- 納期遵守を重視
- 業績水準の維持を期待 等
配慮は人間関係中心のリーダーシップで、いかに組織の関係性を維持向上し組織の満足感を高めるかに向けて行動が取られます。
【行動例】
- メンバーへの気配り
- 集団の良好な雰囲気を維持
- 部下のアイデアの尊重
- 部下の感情への気配り 等
行動理論では、「この2点のリーダーシップが、いかに発揮されるかによってリーダーの組織目標達成への影響力が決定される」と考えます。
2軸の様々な表現方法
リーダーの行動に関する研究においては、様々な表現方法によってその行動が示されていますが、いずれも「課題(仕事)」と「対人関係(人間)」が強固な軸として現れています。
以下は、そのいくつかの例となります。表現は違えども、仕事と人間という軸で考えられています。
調査母体 | 仕事関連 | 人間関連 |
---|---|---|
オハイオ州立大学 | 構造づくり | 配慮 |
ハーバード大学 | 課題リーダー | 社会情緒的リーダー |
マネジリアル・グリッド | 業績に対する関心 | 人間に対する関心 |
九州大学・大阪大学 | P機能・P行動 (パフォーマンス) | M機能・M行動 (メンテナンス) |
変革型リーダーシップ | アジェンダ設定 | ネットワーク構築 |
EQリーダーシップ | IQ | EQ |
2つの行動軸が効果的に働く状況
強固な2軸として現れた「構造づくり」と「配慮」ですが、どちらが組織の成功に効果的かについては、行動理論から一貫した結果は出ていません。
基本的には、「両方とも発揮されている状態」が最も望ましく組織の成功につながると考えられますが、そうでない場合もあることがわかっています。
そこで加味して考えられたのが、「組織の状況」です。
組織がどのような状況にあるかによって、リーダーに求められる行動が変わってくると考えられ、研究がすすめられました。
以下、3つの考え方を紹介します。
LPCモデル
LPCは”Least preferred co-workers”の略で、最も働きたくない同僚に関するアンケートから、組織の状況と効果的なリーダーシップスタイルを探りました。
本モデルでは、以下の3点から組織の状況を分類しています。
- リーダーとメンバーの人間関係の良さ
- 仕事の目標と遂行手順の明確さ
- リーダーの地位・勢力(影響力)
それぞれの高低によって、計8通りの組織分類が可能です。3要素が高ければ高いほど、リーダーにとって好ましい状況といえ、低ければ低いほど、困難な状況と考えることができます。
本モデルの結果としては、組織の状況によって構造づくり型が有効な場合と、配慮型が有効な状況が抽出されました。
まず、リーダーにとって物凄く良いまたは悪い状況の時は、「構造づくり」が有効で、それ以外のリーダーにとって中程度の好ましさである場合は、「配慮」が有効となります。
リーダーとメンバーの人間関係が良くないだけでなく、仕事も整理されていない状況では、配慮をしている場合ではなく業務の整理と指示命令が最優先になるため、構造づくりが求められます。
また、リーダーとメンバーの関係性がよく、仕事も整理されている中で、更に組織の成果を伸ばすためには、新たな戦略や課題設定が重要となるため、構造づくりの重要性が高まります。
一方、関係性は良いが仕事が整理されていない場合や、関係性は悪いが仕事が整理されている場合は、その実行者への配慮が必要になります。
目標ー通路理論
本理論では、リーダーはメンバーの目標達成を助ける立場にあると考えます。どの状況でどのような支援がメンバーの満足・やる気を高め、結果として高パフォーマンスになるかについて、調査しています。
本理論から導かれた状況とリーダーシップのあり方は、現場に足りないものを補うリーダーシップが重要というものです。
以下、具体的なポイントです。
- 業務が構造化されていて、実行することに悩まない業務(単純作業等)には、配慮型のリーダーシップが効果的。
- 業務の構造化が完了しておらず、次のアクションに悩む可能性がある業務(新規事業等)には構造づくり型が必要。
- 組織内にコンフリクトがあるときには、その葛藤に対する意思決定を行える構造づくり型が求められる。
- 組織文化として「自責」で働く従業員が多い場合は配慮型、他責の傾向がある場合は構造型が有効。
- 既に業務に対して高い能力や経験がある場合は、つべこべ言わない配慮型でないと満足度は下がる。
ライフサイクル理論
本理論ではメンバーの業務成熟度の高低を4段階に分け、その状況に応じて有効なリーダーシップスタイルが異なると考えます。
- 成熟度 下:教示スタイル
まずは構造づくり型で業務の遂行方法を指示することが最優先。 - 成熟度 中の下:説得スタイル
引き続き業務遂行の指示は必要だが、本人のやり方にも配慮が必要。 - 成熟度 中の上:参加スタイル
業務遂行指示の割合は減らし、感情への配慮を重視。 - 成熟度 上:委譲スタイル
出来る限りのことは本人に任せて委譲。
結論
リーダーの行動は課題の構造化とメンバーへの思いやり
どちらも大事で、どちらも行動できる必要あり
状況に応じてその比重を変える
特に組織に足りない部分をリーダーが補うことが重要