不振企業の再建支援を行う「事業再生専門家」としてご活躍された三枝匡さんが、自らCEOとして企業成長を実現したミスミグループ。
その成長過程を記された著書「ザ・会社改革」から、事業を成長させるために必要な思考・行動について学びました。
今回は、340人からグローバル1万人企業へ成長させた経営要諦の中から、今の自分に響いた点を紹介します。
企業変革に必要なもの
徹底した現状認識
まずは問題のボトムに潜む本質に迫り、問題の構図を「単純化」しなければならない。それに基づいて新たな戦略を組み立て「いま、そこにいる人々」のマインドを再集結させ、新たな外への戦いに向かっていくのである。
ザ・会社改革/三枝匡
企業を変革する際に、まず第一に必要なのが「なぜ今この状況にあるのか」の理解とのことでした。
このステップを省略した場合、効果的な打ち手は生まれず、現場の納得感も生まれない=変革が進むことは無いようです。
本書では変革の「1枚目」と呼ばれており、「現実直視、問題の本質、強烈な反省論」と記されています。
この点はどうしても逃げてしまいがちで、徹底的に振り返らずに、次の施策に移ってしまうことが、頻発しているのではないでしょうか。
この具体的な反省を行うためには、なぜをしつこく繰り返し、問題を細分化し自分事化することで実現できるようです。
この「しつこく」というのが必須ポイントとのことでした。
そして出来上がった1枚目は、出来上がってしまえば、そんなに特別なことではないですが、課題を明確に捉えていて、現場の心を揺さぶる、そんなものになるようです。
一気呵成の実行
戦略において、同時並行的に「会社全体を少しずつ底上げ」していくという発想は邪道である。改革と呼ぶ限り漸進的アプローチは奏功しない。突出的な成果を狙う。そしてひとつにメドを付けたら次に行く
ザ・会社改革/三枝匡
変革をする際には、考え抜かれた戦略と併せて、一気に行うことが重要とのことでした。
少しずつの変革は上手くいかないようです。
例えば、業績不振でしかたなくリストラをすることは、しばらくしたらまたリストラをする羽目になります。
この事態を避けるには、「一気呵成の勝負で改革に挑む、会社全体を劇的に変えるしかない」と述べられています。
また、「同時並行的」行わないというは大切なポイントだと思いました。
あれもこれもと手を広げて結局どれも上手くいかないということが起こるのは想像できます。
色々課題がある中で、優先順位をつけて、かつ時系列で順番をつけて、何をどの順番にやることが一番組織にインパクトがあるのかを思考する必要があります。
これが今の自分にとって想起される「戦略思考」です。
考え抜く経営人材
上記通り、現状を分析しきってかつ一気に実行に移すには、経営人材が欠かせないです。
本書から経営者のポイントとして以下の点があると学びました。
- 実行者が自ら戦略を創る。
- 「強み・弱み」を理解し、自社のコアコンピタンスを理解している。
- 血が騒ぐ面白い事業だと思っている。
- 直面する現実がどのような「構造」になっているか理解するのが速い。
- 何かを感知したら現場に足を踏み入れる。ハンズオンで現物に触れる。
- 考え抜くことができる。
- 無理なものを無理と判断できることとその責任感
要するに「事業の責任者として、どう勝っていくのかを自身の立場とリソースをフル活用して描き切り実行することができる(またはしようとする志向がある)」かが重要なポイントだと理解しました。
企業変革に必要ないもの
シナジーの無い新規事業
既存事業が伸びない時に、新規事業を検討するのは自然な流れかもしれませんが、その際にはそこにシナジーがあるのか検討が必要とのことでした。
事業のシナジーは以下の点から創出される可能性があるようです。
- 既存商品と関連性があるか。
- 既存商品の技術が活用できるか。
- 顧客が重複しているか。
- チャネルが重複しているか。
- ブランドイメージが活用できるか。
- 競争相手が同じで優位性があるか。
- 勝つ競争要因が同じで優位性があるか。
逆に上記に当てはまらない場合は、シナジーが無く勝ち抜くのは難しいことが予想されます。
また、本書では狙う市場は小さくても圧倒的なナンバーワンを目指すことが勝ち続けるために重要な点と教えてくれています。
幹部からの戦略なき号令
社員の意識を変えるために「意識改革をしよう」と叫ぶ経営者は経営力が足りない。しょせん何も起きない。会社を変えるとは、経営者が計算しつくした戦略的なアプローチと具体的アクションの切り込み方を用意し、そのうえでトップ自らが矢面に立つ覚悟で既成組織と既成価値観を突き崩していくことである。
ザ・会社改革/三枝匡
会社では経営陣からの「がんばれ!」の号令がある一方で、現場からは「目標はわかったけど、どうやったらそこに到達できるんだろう」という悩みがうまれることがあるかもしれません。
顧客に近い現場が、アイデアを出し、目標達成のために努力することは必要なことだと思います。
一方で、経営陣としても、どのように目標達成できるのか、その道しるべとなることが求められていると学ぶことができました。
組織論として学んだ点
ミスミでは「組織活性循環動態論」というものがあるようです。
組織の在り方として、「まずは小さく」が原則のようです。
これは、現場が権限を持って早く物事を進めていくためにある原則かと理解しました。
ただ、組織が小さいと、「ちまちま」としか進まなかったり、会社として統率がなく「ばらばら」になるという弊害があります。
そうなったら、戦略で組織を束ねて統率をとるようです。
そしてそのうち統制が強くなって現場裁量が減りすぎたら、また小さくする。
この活性化のための循環を意識されているとのことでした。
必ずしも、小さい組織が良い・大きい組織がベストということではなく、組織の活性度を見極めながら、組織の大きさを決めていくことが重要と学びました。
まとめ
変革は現状を考え抜くことから始まる
変革を実行するときは1個ずつ一気にやる
会社(経営)は、どう勝っていくのかを示す
【学習文献】