日経新聞2020年12月3日朝刊にて「ジョブ型雇用と日本社会」という記事がありました。
現在、日本では従来の「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」への切り替えている、または切り替えを検討している企業が増えているようです。
今回は、このジョブ型雇用のメリット・デメリットを考えたいと思います。
ジョブ型雇用とは?
ジョブ型雇用とは、事前に定義された職務とそのポジションに人を雇うという考え方で、欧米で一般的な雇用形態となっています。
ジョブ型雇用と対比的に語られるメンバーシップ型雇用は日本で実施されてきた形態で、以下のような違いがあります。
メンバーシップ型雇用
- 特定の仕事の実行者ではなく、「会社」のメンバーとして雇用。
- 総合職のイメージ。
- 入社後、会社からの業務アサインを実行する。
- 異動や転勤で変更もある。
- 給料等の処遇は格付・役職に依る。
ジョブ型雇用
- 特定の業務の実行者として雇用。ポジションを埋める人材として雇用
- 採用時に提示される職務記述書の内容を遂行。
- 勤務地等の変更は原則無い。
- 給料は仕事内容で決まる。
例えば、メンバーシップ型では、営業、開発、スタッフ、どの部門でも「課長」といえば、皆同じ給料や処遇になります。
しかしジョブ型では、その仕事内容に応じて、同じ課長であっても給料が異なる可能性があります。
日経新聞の記事内容
日経の記事には、日本においてジョブ型への移行は難しいのではないかと記載されていました。
以下が記事のポイントです、
企業の狙い
- ジョブ型に移行すれば成果評価だけで、リモートでも管理しやすい。
- コロナで仕事が減る中で、仕事がないことによる人員整理の狙いがあるか。
日本では雇用制度・労使関係から導入が難しいか
- ジョブ型は仕事がなくなればポジションクローズでクビになる。
- その際、外部労働市場=次の転職がスグにできる体制が発達していないと継続的な雇用が失われる可能性がある。
- そもそも正社員のクビが難しい法令が日本にはある。
- 欧米は職業別・産業別労働組合であるのに対して、日本は企業別労働組合。同一企業内で処遇に差をつけることを容認するか。
そもそも、環境変化への柔軟な対応が求められる時に、職務を固定するジョブ型が最適解であるのか。
ジョブ型のメリット・デメリット
ジョブ型の導入のメリット・デメリットには以下の点があると思います。
この中で、自分が一番懸念するのは、「幅広い経験を持った人材の育成」です。
これから複雑性が増し、答えが見えにくくなるのであれば、
- 自分の価値観をしっかり持ちながら、
- その上で自分の価値観を客観視出来て、
- 様々な価値観を許容・組み合わせながら
- 新しい仮説を立てていく
力が求められると考えています。
この力を養うこととメンバーシップ型は親和性があると思います。
たとえば、システム屋として入ったが営業になり、幹部登用のために人事も経験して偉くなると、様々な価値観を客観視する力が身につき、様々な考えをミックスできる人材になれる可能性があります。
また、単に欧米に追従するという理由だけだと、欧米と同じにすることが目標になってしまい、差別化要因を一つ失うのではないかと懸念しています。
組織のケイパビリティを形成するうえで、欧米との違いを作り出すためにも、なぜジョブ型が必要かということを事業の文脈の中で検討して、進めることが必要だと思います。
例えば、あまりにも給料と仕事内容がマッチしておらず、年齢が高いだけで高い給料をもらっている層がいて、一方今後の新しい事業形態としてキーになる若手エンジニアには十分な処遇ができず人を失っている。
このような事象に対して、人員の整理、処遇のリセットに使うのであれば、一理あるかもしれません。年功序列が事業成長の足枷になっているケースです。この場合には訴訟対応を含む体制整備も必要になります。
まとめ
周りがやっているからという理由だけでジョブ型移行は危険。
事業戦略の中でジョブ型が親和するのであればあり。