モノのコモディティー化が進む事業においては、ただ単にモノを売るのではなく、サービスを提供することで収益を得ることが考えられます。
今回は、サービス型へ転換した企業の事例を学び、転換に必要な要因と成果について紹介します。
サービス型への拡大事例
ブリヂストン
石橋さんが創業者でブリヂストン(Bridge Stone)と言われている本社では一般的なタイヤの販売をしていました。
そこから、「リトレッド事業」と呼ばれる、走行により摩耗したゴムを新しく貼り替えて、タイヤの機能を復元するサービス提供を開始しました。
このサービスにより、バスやトラック会社の顧客は、車両維持にかかる経費削減を実現するとともに、整備されたタイヤによる安全性、そして環境への配慮を実施することができました。
ブリヂストンとしては、リトレッドにコストはかかりますが、引き換えに工費含む安定的な収益を確保することができました。
パーク24
町のいたるところに見かける時間制の駐車場。その駐車場を運営するのがパーク24です。
元々パーク24は無人駐車機会の製造・販売会社でした。
そこからビジネスを転換し、土地所有者から土地を借りて、受託運営する形で自ら駐車場ビジネスを実施するサービスとなりました。
この転換により、顧客が病院やホテルなど一般公共施設から一般の土地所有者に変わりました。
そして一般の土地オーナーは使えていなかった小さな土地の賃貸先が見つかり、土地賃料を得ることができるようになりました。
パーク24は、機会の販売費ではなく、実際の駐車料から収益を得ることになります。
ゼロックス
2021年4月1日から富士フイルムビジネスイノベーション株式会社となる富士ゼロックスは、従来コピー機をリース契約で貸し出し、トナー等の消耗品で収益をあげていました。
そこから、「プリント環境の効率化」を提供価値として定義し、コンサルティングを通じて顧客の印刷事務を改良するサービス提供に変換しました。(機器の配置方法や稼働改善の提案等)
顧客である企業は、印刷事務に関する悩みを解決することができ、富士ゼロックスは製品販売費に加えて、コンサル料を収益とすることができました。
転換できた要因
上記をサービス型へ移行した企業の一例として挙げましたが、そこには以下の共通点があるように思いました。
- コモディティ化していたとしても、良い製品を製造する力を持っていた。
- 顧客となる対象にとって利益を定義するための、顧客ニーズへの仮説を持っていた。
大きなポイントは、実業で良い製品を持っていたという点があります。
例えばブリヂストンのリトレッドをサービスとして実現するためには、土台となるタイヤの耐久性が必要になります。その点、ブリヂストンは耐久性あるタイヤを提供する力を既に持っていました。
売れ行きが安定的でなかったり、他者との差別化が難しくなっていたかもしれません。
それでも、蓄積された貴重な製品知識と製造ノウハウは持っており、その上でどのような提供の仕方をしたら、サービスとして成立するのかが検討されていたと推測しています。
転換による成果
サービス化することで、物販一辺倒の行き詰まりから脱する道が模索できることに加えて、以下の利点があると考えています。
顧客との継続的な関係
サービス化することで、顧客関係が「売り切り」から、「継続的」なものに変化します。
このことは、常に顧客接点を確保できることになり、次のモノの開発やサービスの検討に必要な顧客の状況・悩みにリーチしやすくなれると思います。
収益の安定化
売り切りの場合、いつ売れるか分からないので、収益の計画が難しいです。
しかし、サービス型であれば、定期的な売上となるため、資金計画が容易になる利点があります。
ソリューション型事業への発展可能性
サービス転換を通じて得た顧客ニーズに関する仮説と、継続的な顧客関係から得られる顧客の実際の悩み事から、次の「本質的な顧客ニーズ」=「顧客課題」を得ることができるかもしれません。
もし、顧客課題がわかれば、モノとサービスを合わせて「ソリューション」という形で新たな価値提供への道が開けます。
富士ゼロックスのケースは、コンサルテーションが含まれており、既にソリューション型と言えるかもしれません。
ソリューションの利点は以下の点です。
- 顧客理解が進むほど、顧客が他社に利用を切り替えるスイッチングコストが高まる=囲い込みができる。
- 囲い込めると、1から営業し情報収集するためのコストを削減できる。
- ソリューションとして、顧客の課題解決を売ることになると、顧客が原価を想定しにくくなり、価格設定に柔軟性が生まれ、収益を確保しやすい=バリューベースドプライシング。
- 顧客の課題解決に繋がれば、新たな物販拡大に繋がる。
もし、価格帯が大きく変わらないのであれば、顧客としては自分たちのことをよく理解してくれている企業を使い、他社へ切り替えるは行わないでしょう。
しかし、著しく価格が高いということになれば、他社の入り込む隙を与えることになり、その点企業としての継続的な努力は求められます。
学び
サービス提供は物販の限界を打破し、さらに継続的な顧客関係を構築する良い機会。
継続して顧客の生の情報に触れられる信頼関係を構築できれば、次の事業チャンスに繋がる可能性あり。