人事担当者にたいして、「物わかりのいい人事」、「何してるのかわからない人事」、「融通の利かない人事」、「事業に積極的に参画している人事」等、様々なイメージがあります。
The 9 Faces of HR (Kris Dunn著)では、人事を9つのタイプに分けて紹介しています。
その分類から、自分がどのタイプの人事であるかを自覚することは役に立つと述べられています。
それは、自分の人事としての性格に自覚的になることで、人事領域のどのような業務や責任で活躍できるのか、どんな組織で求められるのかを知ることができるためです。
また、自分が思い描く人事像とのギャップがあった際には、どこにその差異があるのか分析し、変化するための計画をすることもできます。
今回は、この「The 9 Faces of HR」という書籍における、人事タイプ分類方法を紹介します。
分類方法
本書では、人事業務における「キャリアレベル」と「変革志向性」から9象限を定義しています。
キャリアレベルはタイトルによって自動的に決まるわけでなく、実際の経験を踏まえて決められます。(小さい会社の役員である場合、中位が適切なこともある)
著者はこの分類について「良い悪いではない」と繰り返し述べています。
自分がどういうタイプの人事であることか自覚的になることが目的で、自分の適所や将来のキャリアを考える際に活用するものとしています。
各タイプを形成する要素
9タイプについて、それぞれ以下の4つの要素からその性格を記述しています。
- Cognitive(認識力)
- Assertiveness(積極性)
- Rules Oriented(ルール順守)
- Detail Oriented(細部にこだわる)
“Cognitive“は、早く複雑な問題を理解し解くことができるような力のイメージです。この数値が高いと学習スピードが速く、新しい考え方もキャッチアップしていくことができます。
”Assertiveness“は、自分の考え・意見・願いなどをちゃんと形にして、攻撃的にならずに明確かつ直接的に表現できる力です。
”Rules Oriented“は、規則やルールをどれだけ重視するかという傾向です。
”Detail Oriented“は、細かなことをどこまでこだわるかという傾向です。
分類結果
Top Executive/Senior Management レベル
最もシニアな層には、”Natural”、”Mentor”、”Judge”がいます。
Natural/自然体
Cognitiveがとても高く、Assertivenessも高いです。しかしルールや細部にはこだわらないタイプです。
人事業界において「レア」な存在で、組織ではクリエーターやイノベーターと見られます。
新しい組織文化を作ることに長け、ビジョンを示すことが得意です。
一方部下から見ると、ビジョンは良いから日々の仕事へもっと関心を持って処理してくれという不満が生まれるかもしれません。
そしてNaturalは自分を人事と思っていないです。(実際人事畑でない人が役員になるケースで誕生することあり)
Mentor/良き指導者
Cognitive、Assertivenessが高く、ルールや細部にもある程度関心を持ちます。
良いコーチ・支援者として、現場のキータレントを支援します。
現場と幹部を繋いだり、次のキャリアを示したりします。
ただ、組織の子守ではないので、優秀でない者には時間をかけません。
あくまで組織が勝つために人々を支援しています。
Judge/裁判官
Cognitive、Assertivenessが高く、ルールに特にこだわりを持ちます。細部にもある程度関心を持ちます。
「組織の統制」とそのための「ルールの順守とリスクの最小化」が市場ミッションでそのために石橋を叩いて渡らない意思決定や提案を行います。
中間管理職レベル
この層には、”Assassin”、”Fixer”、”Cop”がいます。
Assassin/暗殺者
とても高いCognitive、Assertivenessとは対照的に、ルールや細部にはこだわりを一切見せません。
日頃の日常業務では存在感を発揮しないですが、色んな影響要因が絡む「変革プロジェクト」で突如輝くスペシャリストです。
無秩序歓迎で、とても賢い印象を持たれます。初めは人から尊敬されますが、だんだん嫌われることもあります。
他のHRが出来ないまたはやりたがらない難しいことをやる存在です。
「プロジェクトが終わったらよく眠る天才」そんなイメージです。
Fixer/調停人
全ての要素をバランスよく中間的に保有するタイプです。
決してHRの表舞台には出てきませんが、組織運営上欠かせない調整や施策の実行をアレンジしている存在です。
組織における翻訳家・ガイドであり、組織の問題を中立的な立場から確実に修復する人材です。
Cop/警察官
Coginitive、Assertivenessは普通ですが、ルールと細かいことにやたらこだわるタイプです。
「組織をコントロールし、リスクが顕在化しないようにNoを言い続ける」それがこのタイプの仕事です。
労働契約のサイン、就業規則のアップデート等を着実に実行するのは、この警察官がいるおかげです。
スタッフレベル
一番ジュニアで、個人プレイヤーとして組織に貢献するこの層には、”Rookie”、”Clerk”、”Machine”がいます。
Rookie/新人選手
ルール以外の要素が全て高い、人事の世界に入りたての人材です。
組織においては、期待の星として見られることが多いようです。基本的な能力も高い傾向にあります。
一方で扱いに難しい部分があり、常に気をかけていく必要があります。
例えば、定例業務に追われることを嫌う、意味あることをしたがるなどの傾向があります。
また昇進等へのこだわりも強く、生かすも殺すもマネージャーの力量にかかってきます。
Clerk/事務官
細部にこだわりを持ちながら、そのほかの要素も中位程度保有する人材です。
Rookieほど野心がなく、自分のしたいことも明確でないことが多いです。
ただ、1から10までコントロールしなくても、自分で学び仕事を進めていくことができます。
あまりわかっていることをアピールしては来ないですあg、実はちゃんとわかっています。
物事を白黒でなく、グレーなものがあるとみることができるのも特徴です。
Machine/機械
ルールと細部にこだわりを持つ、エントリーレベルの人材です。
決められた詳細なプロセスを確実に実行することが仕事で、それ以上のことについて気を利かせてすることはありません。
もし誰かが自分の業務範囲外と思うことを言ってきた場合、「それ自分の仕事でないので上司に言ってください」と言ってしまうタイプです。
ちゃんとマニュアルにまとまっていることを望み、決められたことはちゃんとやり、そこに喜びも見いだせるでしょう。
まとめ
人事はキャリアレベルと変革の能力からタイプわけができる。
自分がどういうタイプであるか自覚することは有効。
また上司や部下のタイプも理解しておくことで仕事が進めやすくなる。
本書では、HR VPとして活躍する筆者の経験に基づく人事を嫌う人たちの分析や人事への偏見も記載されています。
またタイプを構成する4つの要素の高低を見抜く特徴も記載されており、興味深く読むことができました。
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