今、目の前にいる人を信頼していいのか。どうすれば信頼関係が築かれるのか。
仕事を進めていくうえで、信頼に基づく人間関係はパフォーマンスにプラスになると考えられています。
例えば、高い信頼に基づいて他者のために行動できる「利他的」集団は、自分のことばかりを追求している「利己的」集団より成功確率が高いという考察もあります。
組織行動の一つである「組織市民行動」の研究は、この考察を支持する内容だと思います。
組織市民行動については、以下の記事をご参照ください。
では、信頼関係を考える際に、「どんな人と信頼関係を築くことができる」のでしょうか。
「どんな条件が揃うことで信頼関係は育つ」のでしょうか。
今回は、ジェットブル航空会長のジョエル・ピーターソンの著書「信頼の原則―最高の組織をつくる10のルール」から信頼関係が築かれるポイントを紹介します。
信頼できる人の3つの条件
確実に自分の代わりを担ってもらえることが信頼としたときに、その基礎を築くためには「3つの条件」があるようです。
- 人格:相手のことを自分ごとのように思える人か。
- 能力:自分の為に行動してくれる能力があるか。
- 権限:実行する権限が適切に与えられているか。
まず、第一条件は「人格」でした。
自分のことを常に最優先にする人を信頼することは難しく、最悪裏切られることも考えられます。
まずは「利他の精神」があるのかを見極める必要があります。
第二条件は「能力」です。
いくら「いい人」であっても、自分や他人の為に求められることができるスキルや知性がないと信じて「頼る」ことができません。
最後の条件は「権限」です。
信頼関係が育っていくためには、人格者であり能力がある人に対して、実際に権限を委譲していくことが求められます。
この3つの条件のいずれかが欠けていても、信頼関係の構築は難しくなるようです。
「信じる」ための人柄、「頼る」ための能力、「信頼していることを自ら示す」ための権限移譲
この要素が、信頼関係の条件となります。
信頼関係を築くアクション
本書では、上記3条件を備えた人と、実際に信頼関係を築いていくための「10の原則」が示されています。
その中から、自分自身が重要だと思った原則TOP3を紹介します。
誠実さを身につける
信頼の根本には「誠実さ」があります。
お互いが誠実さを持つことで、信頼関係は育っていくようです。
そのためのアクションとして「言動一致」が重要になります。
「言ってることと、やってることが違う」と思われてしまうと、不誠実となり信頼関係に悪影響があります。
「守れない約束をしない」など、常に自分の発言と行動に気を付ける必要があります。
すべての人を尊敬する
誠実さを組織全体に文化として浸透させるために、リーダーが実践すべきことが「尊敬を示す」ことです。
そのための行動として、誰に対しても「何の思惑なく相手の言葉に耳を傾けること」が最大の尊敬の示し方になるようです。
「無心で聞く」努力は信頼関係を築くうえで、重要な態度になります。
事実をありのまま伝える
信頼を構築・維持していくには、リーダーからのコミュニケーションが不可欠だ。リーダーは事実を、すべての人に、わかりやすく、説得力を持って、完全に共有しなければいけない。よいときも悪いときも、ありのままに伝えるのだ。
ジョエル・ピーターソン;デイビッド・A・カプラン.信頼の原則――最高の組織をつくる10のルール
人々は情報に敏感で、組織の嘘には直ぐに気づくようです。
組織から正しい情報が提供されていないとわかると、信頼関係を築くのは難しくなります。
よって、悪いニュースであっても、包み隠さずに共有していくことが大切になります。
注意!信頼関係の種類
信頼関係はお互いの利益を最大化するために有益なものです。
実際には「信頼関係」といっても、以下の3種類があるようです。
- 相互的信頼
愛情、義務、自分のため、相手の為にお互いの利益を高めあう - 代理的信頼
一般的依存関係。専門性に基づく依頼。弁護士、医者など。 - 疑似的信頼
自分のためだけの便宜的な仮の信頼関係。
本書で構築しようとしているのは相互的信頼です。
しかし、実際に目の前にある信頼がどの種類のものであるかについては、意識的になる必要があります。
そして、疑似的信頼となった場合、信頼が裏切られる可能性について考えておく必要があります。
信頼が裏切られた時の対処法
まずは、「信頼できる人、3つの条件」と「信頼の原則」を守ることで、裏切られる確率は下げられるようです。
しかしながら、それでも裏切りは起こる可能性があります。
裏切られた時の精神的ショックを和らげること、そしてそこから自分の利益を最大化していくためには、以下の対処法が示されています。
- 裏切りは起こるものと、最初から予期しておく
- 裏切られたことについて、自分の落ち度を反省して次につなげる
- 修復可能で、再度信頼してもいいと思えるなら許す
そもそも「信頼する」ということは、リスクを冒すもの。
その関係性構築によって何かを得ようとする分、何かを失うことの覚悟が必要なようです。
まとめ
信頼できる人は、人格者で能力があり物事を任せてもいいと思える人。
信頼は裏切られることがあることを肝に銘じておく。
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