部下から信頼されているだろうか?本音を伝えてくれていないような気がする。。。
上司と部下の関係性は組織の成果において大切な要素の一つです。信頼関係があるからこそ伝わる想いやフィードバックがありますし、信頼しているからこそもう一歩頑張ってみようという気持ちが湧きます。
しかしながら、心理学・脳科学の研究は、偉くなり権力を持ち始めると、人は組織の利益にならないネガティブな行動をとってしまうことを明らかにしています。
人間らしさでもありますが、権力=強い武器を持つと、それを自分や親しい周囲のために使いたくなる気持ちになってしまうようです。
具体的には権力を持つと、「自己利益に走る」ことと「相手視点より自分視点になる」ため、他人の立場になって考えることが難しくなります。
実体験においても、業績が予定通り上がらない課題事業のリーダー自身が、自分の報酬を増やそうとするシーンを見てきました。リーダーではない自分としては、そんな場合ではないのでは?と思いますが、高い報酬を実現できる権力と交渉力を持つと、そのような行動に出てしまうのが人間であるということだと思います。
リーダー自身として、またはリーダーを見極める人事部門として、リーダーが権力の誘惑に負けずに、高い視座を維持しながら行動できているかを知るにはどうすればいいでしょうか。
リーダーが権力に飲み込まれないためには、「部下の影響戦略」を観察し内省することで可能となります。
部下の信頼がわかる影響戦略
部下が上司に対して報告や提案をする際に、どのような方法でコミュニケーションしているか、その方法を影響戦略と呼びます。以下の方法がありますが、数字が大きくなるほど上司のことを信用していないときに実施される可能性が高くなります。
1.合理性:論理的に説明しようとする
「〇〇のデータから推測するに、現在△△な状態と考えられ、よって××するべきだと思います」
データやロジックを用いて客観的に提案してくる場合は、上司のことを「正しいことを言えば、正しく判断してくれる」と、部下が上司を率直に私心なく議論してくれると信頼している状態と考えられます。
2.情熱性:熱意を持って相手の価値観に訴える
「〇〇さんが目指す理想△△のためにも、絶対××したほうが良いと思うんです!」
情熱性の場合は、上司の価値観を肯定している姿勢、その点を熱く自分のこととして語ることができる点から、上司のことを信頼している状態と考えられます。
3.相談性:支援やアドバイスを求める
「〇〇だと思っているんですが、ご相談させてください」
意思決定に相談やアドバイスを求める場合、率直に提案できない点で少し上司に遠慮があるかもしれませんが、ちゃんと相談できる点において、ある程度の信頼関係はあると考えられます。
4.迎合性:上司の機嫌伺い
「いやあ確かに〇〇さんの言うとおりだと思います。その視点はなかったです。そのうえで△△しませんか?」
相手の機嫌が悪いと提案が通らないと感じている点で、少し信頼を欠いています。しかし直接議題について話しができるだけ、信頼関係は保たれていると考えられます。
5.交換性:承諾してくれたら次は必ず支援すると約束
「今回〇〇としていただけたら、次回は必ず△△します」
上司へ提案する際に、交換条件や昔やったことの貸しを持ち出す場合、関係性は黄色信号です。率直に議題について話をしても、通じないと部下が感じている状況で、信頼関係は弱まってきています。
6.より上の権威性:上の人の支持やルール・習慣を持ち出す。
「役員の〇〇さんは、過去△△という判断をしてきてますので、××とすべきだと思います」
上司・部下の1対1を超えて、他社を巻き込んできた場合は信頼関係が損なわれてきています。特に上位上司や幹部など、対峙する上司よりも上位のコメントや意見を多用する場合は、「この人(上司)に言ってもしょうがない」と思われている可能性があります。
7.主張性:従うべきルールを指摘し繰り返し要求
「前にも言いましたが〇〇というルールになっているので××にしないと。そうでないと私は△△役員にこのこと報告しますよ」
ルールに基づき何度も指摘し、最後には脅しや圧力を使ってくる場合、信頼関係は危険な状態です。
8.結託性:同僚や自分の部下を巻き込んで訴える
「〇〇部現場のメンバー総意の提案です。すでに△△には××するように指示を出しています」
組織のメンバーで結託して影響力を行使してきた場合、この関係性はほぼ崩壊している状態と考えられます。
関係性を修復するアクション
信頼関係を失ってしまった場合、どのように修復していくことができるでしょうか。
修復には「謝る」と「相談する」がキーアクションとなるようです。
謝る際の注意点
関係性を回復するためには「謝る」ことが効果的ですが、その際にも注意する点があります。
以下が謝罪時の要点です。
- 素早く謝罪する
- 言い訳しない
- 弱い立場を受け入れる
- 相手の立場に立つ
- 変化を約束する
- 贈り物で償いのシグナルを送る
何が信頼関係を損なうことがあった場合、
「まずはスピーディーに否を認める。その際に自分の都合や状況は伝えずに、自分が間違っていたことを伝え、相手の立場を配慮した言葉を伝える。更には具体的に今後どのようにしていくかを伝え、お詫びがあればモノを渡すこと」
の実践が必要です。特に言い訳しない=自分にもこのような事情があって・・・というのは言いたくなりますが、関係性修復時には控えたほうが良いようです。
相談することの効果
上司部下関係性回復に向けて、上司は部下に相談してみることが効果的です。
部下に対して、部下の建設的な意見を意思決定内容にも反映させていくという姿勢を見せることが、上司の誠実さ、相手への尊敬になり、関係性を修復されていくためです。
上司から認められた、話を聞いてもらえた、それが周囲にも伝わり認められた等を通じて、関係性は修復されていきます。
関係性をこれ以上壊さないための注意点
逆に上司が避けるべき言動もあります。それは、何かを相談・依頼する際に「交換条件」をつけることです。
「社運がかかってる。君がやる価値のある仕事だから頼む」
「今回のちゃんとやってくれたら、その時は昇格を検討するから頼む」
このような交換条件は上司の不誠実さを表すことになり、信頼関係を更に悪化させることになります。
まとめ
部下が他者を巻き込んで意思決定を迫ってくるようなときは、部下との関係性に要注意
率直に交換条件なく仕事について相談し、良いものは取り入れ、相手の存在を認知していくことが関係性修復には必要
【参考文献】