書籍紹介

【事業を理解し】NETFLIXの最強人事戦略/パティ・マッコード【常識を疑う】

コロナで外出が思うようにできない中、自宅で映画や動画を見る機会が増えています。

様々なコンテンツプロバイダーがいますが、その中で有名な企業にNETFLIXがあります。

NETFLIXの最強人事戦略(パティ・マッコード著)」では、NETFLIXの成長を支える「自由と責任の文化」を人事としてどのように形成してきたのかが描かれています。

今回は、この書籍から自分なりに人事として会社を良くするために必要だと感じたポイントを紹介します。

本書を通じて私が感じた人事のあり方は、「事業を理解し、常識を疑い、率直に議論できるようになる」というものでした。

事業を理解する努力を諦めない

特に大きな企業では人事と現場の距離が遠くなり、自分の会社がいったい何をしているのかわからない人事というのが生まれることがあります。

これは珍しいことではなく、起こりえる現象だと思います。

しかしそれでは会社の成長を実現する人事にはなれないということが、本書を読む中で感じることができます。

人事は事業を理解し、事業で勝つために何が文化として優先順位であるのかを論理を持って語ることができ、それを従業員に伝達していくことが、一つ重要な貢献になります。

社内のどの部署、どのチームの問題であっても、従業員がそれを自分のものとして解決するには、経営幹部と同じ視点が欠かせない。この視点があれば、事業のあちこちに潜む問題や機会を発見し、うまく対処することができる。皮肉なことに、企業はいろいろな研修プログラムに多額の費用をかけ、従業員のやる気を高め業績を測定するために膨大な時間と労力をつぎ込みながら、事業のしくみを全従業員に説明するのを怠っているのだ。

パティ・マッコード.NETFLIXの最強人事戦略~自由と責任の文化を築く

私はビジネスパーソンとして仕事をすることにやりがいを感じ、もう二度と人事部の励まし番長に戻りたくなかった。また、経営陣がなぜこの決定を下したのか、全員が目標の達成に最大の貢献をするにはどうしたらよいか、どんな障害が見込まれるかを、全員にわかりやすくしっかり説明することにもやりがいを感じた。

パティ・マッコード.NETFLIXの最強人事戦略~自由と責任の文化を築く

一方で職場から見れば、人事が来たところで事業を知らないし、こっちだって忙しいんだから付き合ってる暇はないという反応が予想されます。

NETFLIXでも、同様なことがあったようで、その時著者は現場に対して、

それならちゃんと事業を理解することを期待し要求すべき!!」と啖呵をきったようです。

自分にそこまでのことが言えるかはわかりませんが、成功のために最適な文化、戦略、チームを作るんだ!という使命を持ちながら、以下のことを実行していく勇気を得ました。

  • 上手くいっている会社だって邪魔扱いされることがある。現場にそっけなくされても、より良い戦略を創るという自分の使命を忘れずに、めげない心を持つ。
  • 職場に入り込むためのお役立ち実績を積み重ねる。

これって、営業が顧客に商品・サービスを売るプロセスに似ています。

そこには信頼関係構築が必要となります。

信頼関係をいかに築くかについては、以下の記事をご参照ください。

そもそも戦略があるのか。

なお、NETFLIXのケースでは、リーダーに創業者で強力なリーダーシップを持つリードヘイスティングスがいます。

よって、会社として何をしていくべきか、どう勝っていくかについての戦略はあったんだと予想しています。

その中で、その創業者の想いを体現するためにどんなチームを作り、どんな文化を創るかが人事の仕事でした。

もし、会社に優先順位や戦略が無かったらどうしたらいいでしょうか。

現場

一応ビジョンが語られたり、目標が掲げられたりするけど、どうやってそこにたどり着くが全然わからない。
結局、頑張れ・耐えろ・根性だ!で勝ち筋が見えない。。。

その時もやることは同じで、今ある経営の意思決定・事業を理解し、現場に伝え、そのフィードバックを経営に返すことで、戦略をブラッシュアップしていくしかないというのが自分の考えです。

その場合、今は明確な戦略を打ち出せなくても、他者の意見を客観的に受け止められる知性と、成功のための熱意を持ったリーダーは必要です。

もし、自分のエゴばかりを追いかけ、成功を熱望しないリーダーであれば、組織を去るのも一つの選択肢ではないかと思います。

やってることに本当に意味があるかを考える

言葉倒れの「ベストプラクティス」がまかり通っている。たとえば人事考課連動型のボーナスと給与、最近流行りの生涯学習のような仰々しい人事施策、仲間意識を育むための楽しい催し、業績不振の従業員に対する業績改善計画(PIP)など。こういうことをすれば従業員の力を引き出し(エンパワメント)、やる気を促し(エンゲージメント)、仕事に対する満足度と幸福度を高めることができ、それが高い業績につながるという思い込みがあるのだ。

パティ・マッコード.NETFLIXの最強人事戦略~自由と責任の文化を築く~

NETFLIXでは有給休暇制度を廃止し各人の判断で休めるようにしたり、経費規定の廃止し仕事に必要な費用な申請を支払うなどしているようです。

この点から得た点は、「過去からやっているからやる」「他社がやっているからやる」ということにストップをかける勇気です。

もしかしたら自分の頭が悪いから価値が分からないだけで、本当は意味があるんだろうというものについても、恥ずかしがらず「やらない」ことを提案してみることが会社の成長に繋がるかもしません。

本書の中で著者は実験してみて無駄をなくし、もしやめてみて問題になったら元に戻せばいいという柔軟なありかたを示してくれています。

一例として著者は人事考課は辞めた方が良いと主張しています。育成のため、処遇に差をつけるため、解雇するため、いずれの理由においても年に一回の制度がなくても、頻繁な個別面談があれば十分かつより効果的だといいます。

1年間貯めたコメントは納得感が低く、従業員にはサプライズにもなり、この驚きや納得感の低さが処遇の不満や訴訟を生むと考えられます。

やる気への疑い

私が人事関連で使われる「エンゲージメント」という言葉が大嫌いなもう一つの理由は、「業務遂行上の問題はやる気不足に原因がある」という暗黙の前提が見え隠れするからだ。正直言って、そんなに単純な問題なはずがない。やる気のない人材を解雇するだけで高業績を挙げられるなら、どんな企業もとっくに大成功している。

パティ・マッコード.NETFLIXの最強人事戦略~自由と責任の文化を築く~

自分自身も人事で働く中で、このエンゲージメントやモチベーションを語るリーダーに疑問を感じていました。

確かにやる気は大切な要素だと思います。やる気が高い社員の方が頑張りが効くし、たぶん働いている本人も仕事を楽しめていると思います。

ただ、事業が上手くいかない、目標に到達しない、結果が出ないというときに、現場のやる気に原因を求めるのは経営の放棄のように思えます。

どのように勝つのかちゃんと戦略を示せているか、そのために優秀な人材を集めてエキサイティングな職場になっているか、顧客の声に向き合えているか等、省みる点は多々あると思います。

「やる気を高めろ」という主旨の議論があった際には、本当にやる気の問題なのかを考えることが必要だと確信を持つことができました。

まとめ

人事の一つの在り方は事業を理解し、常識を疑い、率直に議論すること

事業の理解のために現場の懐に入る丹力と提供価値を磨く

前例踏襲に常に改善を考える

やる気の議論になったら危険信号

【紹介した書籍】