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【絶対vs相対】評価制度の評価基準の決め方【評価項目】

評価制度を実施する際、どのような項目や基準に照らして行うのがいいのだろうか?

人事評価実施時に用いる評価項目は評価制度を実施する目的に応じて設定します。

  • 予算管理であれば相対評価にして評価結果の分布を抑制
  • 経営からのメッセージ伝達強化であれば経営戦略に結びついた求める人材像と要素
  • 職種ごとに人材育成を図るためであれば、各職種に求められるキーとなる要素 等々

評価制度の目的については以下の記事をご参照ください。

今回は、一般的な評価項目と絶対評価・相対評価の手法について紹介します。

一般的な評価項目

評価基準を決める際には、「何のために何を測ろうとしているのか」を決めることから始まります。

そして、その「測ろうとしている要素」を「測るために必要な項目」を考えます。

例えば「生産性の向上」が目的で、生産性の状況を測りたいとなると、具体的にその組織における生産性の定義と測定方法の検討が必要になります。

よって、各組織の状況に応じて項目は変わってくることになりますが、以下検討の際の参考として、欧米と日本における一般的な評価項目について紹介します。

アメリカのキャンベルモデル

アメリカではパフォーマンスの評価として8つの観点から評価していく「キャンベルモデル」と呼ばれるものがあります。

普遍性の高い評価基準として、客観的にその「仕事の成果」を評価します。一方で、その人物像についてまで立ち入って評価するものではありません。

よって、優秀な業務遂行者を確認することはできますが、昇進を検討する目的で人となりを含めてまで評価したい場合には情報が不足する可能性があります。

  1. 専門業務遂行度:担当する中核的・専門的業務の遂行度
  2. 一般業務遂行度:特定の業務と関係なく誰もが行う仕事の遂行度
  3. 文書・口頭コミュニケーション:1対多での情報伝達力
  4. 努力:悪い条件や逆境でも完遂し努力する程度
  5. 自己規律:時間や生活(酒におぼれない、遅刻しないなど)を管理
  6. チーム成果の促進:チームの意欲を高め相談とサポートをする程度
  7. リーダーシップ:実施手順を教え率先垂範し部下の仕事に影響を与える程度
  8. 経営管理:目標設定、進捗管理、危機管理、支出抑制、部門の利害を代表し、部門全体の管理を行う程度

日本での成績・能力・情意

日本では能力に基づく組織の序列作りと処遇を行う経営スタイルで成長してきた歴史があるため、欧米と比較し能力を優先する傾向があります。

よって、業績だけでなく能力や人物評が含まれる評価を実施してきました。

具体的には「業績評価」「能力評価」「態度評価」の3点になります。

項目内容
業績一定期間の業務目標の達成度
能力業務に必要な知識・技術・理解力・判断力など能力の保有具合
態度業務に必要な責任性、積極性、協調性など態度の発揮具合

欧米でいうパフォーマンスは業績評価に含まれます。能力や態度は直接成果に関係ないかもしれないですが、求められる人物像として評価されます。

なお、この3要素は組織における立場によって求められる比重が変わり、一般的には経営者層は業績、中間管理職層は能力、一般社員は態度が求められる傾向があります。

絶対評価方法

特定の基準に照らして個々人の特性、行動、成果を評価し、他者の成果が評価結果に影響しない評価手法を「絶対評価」といいます。

絶対評価の良さは、基準の明確さ・客観性を担保しやすく、また他人が自身の評価結果に影響しないため、納得感が得やすいと考えられます。

一方でそれぞれが独立して評価されるため処遇に差をつける際の根拠に活用しずらい可能性があります。

以下は一般的な絶対評価方法です。

図式評定尺度法

数段階の程度のについて、「1~5」や「S~D」などの標語で評価する方法です。

<イメージ>

  • 5:非常によくできている
  • 4:よくできている
  • 3:どちらともいえない
  • 2:よくできていない
  • 1:全くできていない

評価しやすい良さがある一方で、基準が不明確でエラーが起こりやすい手法です。

照合表法・チェックリスト法

職務行動に関する記述肢と実際の行動を比較し、日頃の行動の観察・記録として実施します。

事前に評価すべき行動のチェックリストを作成しておき、そのリストに沿って、できているかどうかを確認していきます。

行動基準評定尺度法

BARS = Behaviorally anchored rating scalesと呼ばれる手法で、優れた職務行動とそうでない行動基準を段階的に作成し評価するものです。

評価を職務の重大事象に限定し、標語となる指標を行動の形で定義するため、客観的かつ正確でフィードバックも容易な手法と言えます。

ただ限定的な重大事項にフォーカスするため評価事項の網羅性が限られるのと、行動基準の標語を開発することに時間がかかります。

自由記述法・所見法

強い、弱み、資質、育成手案度について、自由に記述して評価する方法です。枠に縛られず、思った通りに評価できるため、育成目的で柔軟な活用が可能ですが、処遇に結び付けるのは難しい手法になります。

相対評価方法

グループ内での相対的な順位や位置づけが評価のポイントになり、他者との比較において評価されるのが「相対評価」です。

他者に影響を受けるため、優秀グループに属するか否かで評価結果やそれに伴う処遇に有利不利があるという面があります。

一方、評価が容易であり人格を含めた全体の総合判断をする際に活用しやすく、他者比較に基づくため評価誤差が起こりにくい良さがあります。

よって、昇進を検討する際には適切な手法と言えるかもしれません。

強制分布法

正規分布で評価人数を決めてしまう方法です。

  • S=上位10%:トップ層
  • A=中上位20%:優秀層
  • B=中位40%:一般層
  • C=中下位20%:要改善
  • D=下位10%:ローパフォーマー

本手法は同じパフォーマンスでも、その時所属するグループによって評価結果が変わってしまうという点で、納得感を得にくいことが想定されます。

また正規分布そのものが妥当でないという指摘あり、20%の優秀層と80%のその他同じレベルという考え方もできます。

序列法

グループのメンバーに順番をつけて、評価結果とするものです。

上から順に並べる「単純序列法」と上位層と下位層の両極から選ぶ「交互序列法」があります。

イメージとしてはトーナメント方式に近い順位付けです。

一対比較法

グループ内の人物をそれぞれと比較し優劣を決める方法です。

グループ内のリーグ戦のイメージです。

一人ひとり比較するため正確な結果になりやすいですが、人数が多いと労力かかる方法です。

まとめ

まずは何のために評価するのか、その目的を明確に。

その目的達成のために必要な評価項目・手法を検討する。

育成や会社のメッセージを伝えるなど、差をつけることが目的でない場合は絶対評価が親和する可能性あり。

成果主義の浸透や昇進のための選抜が目的であれば、相対評価の方が正確かつ容易に実現する可能性あり。