メンバーが組織に適合するにはどうしたらいいか?
職場で新しく働くメンバーが、より組織に溶け込んで活躍してくれたら、組織はどんどん成長していくと思います。
今回は組織の価値観や仕事の進め方に適応していく個人=組織社会化について紹介します。
組織社会化のメリット
個人は組織で働くにあたって、組織がどのような価値観を重視しているかを理解し、その価値観や仕事の進め方に合わせて行動していくことが求められます。
このように個人が組織に適用していくプロセスを「組織社会化」と呼びます。
この組織社会化が進むことには、以下のメリットがあるといわれています。
- 仕事への満足度アップ
- 転職意思の低下
- 与えられた役割における成果向上
- 他人のための組織市民行動増加
- ストレスが軽減し精神安定
逆に個人が組織に適応できないと、上記メリットの逆の現象が起こります。よって従業員のリテンションのためにも重要なプロセスになります。
組織市民行動については、以下の記事をご確認ください。
取り組むべき課題と戦術
組織社会化を考える際には、「どのように促進するのか」という過程アプローチ、「組織のどのようなことを習得する必要があるのか」という内容アプローチがあります。
過程アプローチ
組織社会化を促進するためには3つの要因があります。
- 組織要因:企業が行う施策など
- 個人要因:新入社員の行動や特徴など
- 社会化主体要因:上司・同僚などの適用するための情報源など
組織要因(企業施策等)
採用施策
組織社会化のために企業採用の観点から考える課題は「リアリティショック」と呼ばれる、「入社前の期待と入社後の現実のギャップ」に対する落胆です。
新しく組織に加わる個人は、以下の点でリアリティショックを受ける可能性があります。
- 現実的会社状況:会社の将来性や給与水準
- 職務職場環境:実際に働く場所の環境や人間関係
- 労働:仕事と生活の両立など、広く働くことに関する事項
- キャリア発達:自分の志向する専門性に併せた昇進や成長の機会
このリアリティショックを防ぐために「現実的職務予告=RJP(Reakistic Job Previews)」という戦術があります。
採用活動の段階で、組織の良い面も悪い面も両方伝えるようにすることです。
RJPには以下のメリットがあるとわかっています。
- ワクチン効果:組織への過剰な期待を低減し加入後の幻滅を防ぐ
- スクリーニング効果:とりあえず応募する人材を減らし活動を効率化
- コミットメント効果:応募者が主体的に組織を選ぶことによるマッチング
組織社会化戦術
組織への適用を促進するための会社の施策が組織社会化戦術です。
その根底にあるのが「不確実性逓減理論」です。
何の仕事を、どんな価値観で、どの様にやったらいいかについて確信が持てないと人間は不安になり緊張感が高まります。
この緊張感を組織からの情報提供で防ぐことが必要になります。その際には以下の観点について、その進め方が考えられます。
- 集団的 vs 個別的
新規メンバー全体に行うか、個別に行うか - 公式的 vs 非公式的
会社としてオフィシャルに行うか、非公式か - 順次的 vs 場当たり的
事前に計画して行うか、状況に応じて行うか - 固定的 vs 可変的(キャリアの展開が明示的)
今後の時間的な予定が明確か - 連続的 vs 分離的
職場の先輩がロールモデルか、誰も支援しないか - 付与的 vs 剥奪的
新規メンバーの特徴を認め尊重するか、組織の価値観を強制するか
研究の結果では、上記観点では前者の進め方の方が組織社会化が進むとなっています。
つまり、新規メンバー全員に対して、公式的に、事前に計画した入社後のサポート企画を、その日程等を明確にしながら、職場の先輩のサポートを確約しながら、新規メンバーの声にも耳を傾けながら、会社情報を提供していくことが良いといえます。
特に5の連続的と6の付与的の観点が組織社会化と相関強いことがわかっています。
導入研修
組織加入時に組織に関する導入研修を行うと、組織の歴史と価値観への適用が進みます。結果として仕事へのコミットメントとの相関が確認されています。
個人要因(新入社員の行動や特徴)
組織社会化は新規メンバーの行動や特徴に影響されるとも考えられています。
就職活動
個人として、より熱心に仕事をさがし、自分のキャリアを考えていた個人の方が組織への適用が高いです。
採用する際には、就職活動の真剣度が一つ適用の観点からの採用ポイントになります。
プロアクティビティー
個人として自発的に組織のことを知ろうとする行動を取る人材は、結果として組織に適用していくと考えられています。
具体的には以下のような行動があります。
- 自ら組織のことを聞いて回る。
- 自ら自分の仕事ぶりについてコメントを求める。
- 自ら上司と良い関係を築こうと近づく。
- 会社のパーティーやイベントに積極的に参加する。
- 職場外の人とも繋がろうとする。
- 自分の仕事や責任を変更してもらうことを求める。
- 起こったことを前向きに捉える
上記行動が見られるメンバーは、今後組織を理解し、その一員として活躍してくれる可能性が高いといえます。
社会化主体要因
上司や同僚など、新規メンバーと直接関与する人たちは、組織の価値観や歴史を知るための貴重な情報源となり、組織社会化に影響を与えます。
上司・同僚サポートの役割が大事で、発達を支援するフィードックが効果的です。上司・同僚双方からの支援が得られると成果への影響があります。
上司・同僚と相互信頼に基づく社会的交換関係を築けるかが重要なポイントになります。
内容アプローチ
新規メンバーが習得すべき知識、態度、行動については、様々な研究がされています。
具体的には以下の点の学習が必要です。
- 職務について。仕事の進め方や専門用語を学ぶ
- 役割について。自分の担う責任を理解する
- 組織について。文化、歴史、目標、価値観を理解する
- 人間について。メンバーのことを知り、メンバーから受容される
まとめ
新しいメンバーが組織に馴染むことはメリットがたくさん
組織の悪い面も率直に共有する
組織情報を職場が教える
初めの導入計画について明確化して伝える
新しい価値観を尊重する姿勢を示す
上司がロールモデルとなる
【参考文献】