サイバーエージェントの曽山哲人さんが書かれた「クリエイティブ人事 個人を伸ばす、チームを活かす」という本を読み、価値のある人事機能になるためのヒントを得ました。
私のサイバーエージェントのイメージは麻雀Mリーグ、麻雀の強い社長、渋谷というイメージです。
以下、人事として果たせる役割、そのために重要だと感じた点を紹介します。
経営と現場を繋ぐ
経営陣は、会社の業績を伸ばすためにさまざまな手を打ちます。しかし、一つひとつの経営判断の意図を社員に対して丁寧に説明できるかというと、必ずしもそうではありません。経営陣のストレートなセリフは、ときとして現場に誤解を生んでしまうこともあります。 他方、現場の社員は会社に対していろいろな思いを抱えています。しかし、個々の社員が自分たちの考えを会社にバラバラにぶつけたとしても、意見としてのまとまりに欠け、経営陣は「社員は勝手なことばかり言う」といった反応を示してしまうかもしれません。 したがって、双方のコミュニケーションを円滑にするために、人事は経営陣の考えを「わかりやすく」かみ砕いて現場に伝えるとともに、現場から上がってくる声の中から「本質」を見抜いて経営陣に提言していく必要があります。つまり、経営陣と現場の間に立って「翻訳者」や「通訳」のような役割を担うこと、それがコミュニケーション・エンジンとしての人事の役割ではないかと私は考えたのです。
曽山哲人;金井壽宏.クリエイティブ人事~個人を伸ばす、チームを活かす~
会社で働いていると、経営陣は「現場には実行力がない」、「アイデアが上がってこない」、「現場はやる気がない」、「人が悪い」という主旨のことを言うことがあります。
一方で現場からは、「経営陣は目標だけぶち上げて、具体的な戦略を示さない」、「現場の実情が分かっていない」、「何を言って通じない」、「現状は経営者が悪い」ということが聞こえてくることがあります。
いずれも真実を含んでいる一方で完全に正しいわけでもないように感じます。
両者に共通するのは「相手が悪い」という他責の精神です。この場合、建設的な次の一歩が生まれません。
そこで、人事機能の出番であると理解しました。
経営の近くでパートナーとして経営の想いを理解していて、かつ従業員の代表として現場の総意を会社に届けることができるようになれば、確かに人事機能が一番やりやすい立場にあるように思えます。
人事として、経営と現場双方のコミュニケーション潤滑油になることは、組織パフォーマンスに大きなインパクトがあります。
この機能の一つの表れが「組織開発」という領域なのかもしれません。
評価制度の本質
評価・査定はシステムではなく、「納得感のある対話」なのです。日常的に上司が部下と話し合い、良ければほめる、悪ければ指導するという関係を築いていれば、評価や査定の結果がどうであっても、部下は納得してそれを受け入れるのです。
曽山哲人;金井壽宏.クリエイティブ人事~個人を伸ばす、チームを活かす~
以前に評価制度を設計する目的について紹介しました。
どのような目的で設計しても、「評価の納得感」は共通して重要になってくる要素といえます。
この納得感を高めるためには、評価時に「驚き」がないこと、つまり常日頃から被評価者が自分の状況について認識していることが大切になります。
そのためには、年一回の制度による機会だけではなく、四半期でも、月でも、週でも、頻繁にフィードバックしていくことが、最終的な制度の成功に寄与すると学びました。
サイバーエージェントでは、「月イチ面談」という制度を作ったそうです。
人事制度設計のコツ
制度は細かく作りこんではダメなのです。もちろん、しっかりとした軸は必要ですが、制度自体はなるべく軽めにつくり、現場が運用しやすいようにしたほうがいいのです。運用しやすい制度は社内に浸透します。逆に、いくらよくできた制度でも、現場でうまく運用されなければ長続きしません。「制度は計画が二割、運用が八割」。そのことを私はこのときの経験から学びました。
曽山哲人;金井壽宏.クリエイティブ人事~個人を伸ばす、チームを活かす~
人事機能で新しい制度を検討する際には、ついつい細部に入った検討に終始してしまい、「なんのためにこの制度を作るんだっけ?」という部分が忘れられてしまう瞬間があります。
制度を作るという手段が目的化してしまい、大きな目的を忘れてしまうのです。
このパターンにはこうする、この質問が来たらこう答える。
このようなシュミレーションは運用を開始するうえで役に立ちますが、そもそも目的を真ん中にどっしり構えて、よりシンプルで現場が運用しやすいという観点も重要だと学びました。
逆に言うと「あれもこれも実現したい」と欲張らずに、「これだけは取る!」というものを明確にするのが必要とも言えます。
トレードオフになるもののいずれを取るのかを決めて、制度を設計するのです。
「どんな質問がきても対応できるFAQを用意する」ことと併せて「そもそも質問が出ないようなシンプルな制度/かつ目的を明確にし目的に応じた柔軟な対応ができる制度にする」ことも制度の成功には検討が必要のようです。
人を知る
現在は、月に一〇〇人の社員と会って話すことを目標としています。一度に会うのは五人ぐらいと決め、一週間にランチを二回、夜の飲み会を二回設定すれば、週に計二〇人と話せます。それを毎週やれば、一カ月で約八〇人と会えます。そのほかに、さまざまな理由で社員と面談したり、事業部の幹部たちの相談に乗ったりすれば、月に一〇〇人という目標はほぼクリアできます。
曽山哲人;金井壽宏.クリエイティブ人事~個人を伸ばす、チームを活かす~
人事機能が経営の一部として発揮できる強みに「人を知っている」という点があると思います。
日々「ヒト」以外のトピックで忙しくなってしまう経営者に代わって、組織にどんな人がいるのか、労働市場にどんな人がいるのか、誰が次のリーダーとして有望なのかについて、人事機能は時間を使うことができます。
また使わないといけない立場にあると考えています。
しかし言うは易しで、事業をわからない人事は煙たがられたり、人事が現場にくると、何か良からぬことを考えているのではないかと勘繰られたりします。
まず信頼関係の構築が必要なのです。
そのためのアクションは、やはり「人に会っていくしかない」ということを学びました。
会うことで、
- 人事が人と会うことが普通になる
- 会った結果何か問題を解決することで信頼が生まれる
- より、次回から会いやすくなる
というサイクルを回すことができます。
勇気を出したランチ/飲みが、人を知る第一歩として有効だと知ることができました。
人を育てるために必要なこと
私たちが人材育成で重視しているのは、社員に「決断経験」を積んでもらうこと、そのために抜擢人事を断行したり、大きな仕事を任せたりすることです。
曽山哲人;金井壽宏.クリエイティブ人事~個人を伸ばす、チームを活かす~
サイバーエージェントでは若くして関係会社の社長に任命されたり、大きな責任や役割を有望な人材にどんどんやらせてみるという印象があります。
本書によると、このアサインメントこそがサイバーエージェントにおける人材育成の要諦だったようです。
この点は以下の記事で考察していた内容と共通点があり、自分自身も決断経験を重視していきたいと再確認しました。
まとめ
経営と現場双方の意見から次のアイデアを生み出す
定期的にフィードバックする
制度はシンプルに創る
人とご飯を食べる
有望な人に大きな仕事を任せる
【文献】