集団・組織文化

【社会的手抜き】集団による成果の損失を防ぐ方法【フリーライダー】

チームのアウトプットを最大化したい!

個人ではなく組織で働くことの楽しさは、「1+1」のアウトプットが2、3、4と大きくなり、一人じゃできない偉大なことが達成できるのが魅力です。

しかし場合によっては、「集団で働くこと」によって、個人の総和よりもアウトプットが落ちることがあります。1+1<2となってしまうということです。

主な理由のひとつは「コミュニケーションによるロス」

他人と相互的に関わりながら働くために、そのコミュニケーションにおいて効率性や効果が下がってしまう場合があります。

例えば、「人にお願いするのはちゃんと伝えないといけなくて面倒だから、全部自分でやってしまおう」というのは、このコミュニケーションロスを避けたいという心理です。

そしてもう一つ集団のアウトプットを下げる理由は「動機付けの損失」

集団であるがゆえに、別に自分がやらなくてもいいや!とサボり始める心理です。

この行動を「社会的手抜き」といいます。その中でも、手抜しながら利益を得る人を「フリーライダー」、人のことまで構ってられない人を「サッカー(Sucker)」と呼んだりもします。

今回は「社会的手抜き」について、その原因と対策を紹介します。

社会的手抜きの理由

主な原因として、以下の点が考えられます。

  • 評価可能性:どうせやっても認められないし。
  • 努力の不要性:周りが優秀だから、自分がやらなくてもいいな。
  • 手抜きの同調:あいつもやってないし、やんなくていいか。
  • 他者の存在による緊張感の低下:誰かがやってくれるっしょ。

上記通り、集団で行動していると自分が頑張らなくてもいい心理にする要因が多々あります。

結論として、「自分でやる必要なし」という気持ちから、行動しないという結論になるのですが、本当に問題ないでしょうか。

社会的手抜きの影響

社会問題としての事例

社会的手抜きの事例として、ニューヨークでの暴漢事件があります。

1964年のニューヨークで、28歳の女性が夜の帰宅途中に暴漢に襲われ刺殺された。

40分間に渡り助けを求めて悲鳴を上げたが、誰も警察に通報しなかった。

事件後の調べで、38人の住人が助けを求める悲鳴を聞いていたことが分かった。

多くの人が、何かが起きていることを知りながら、「誰かがやる」という心理で一人の命が奪われた事件です。

会社において命までは奪われませんが、楽しく働くための環境として皆が他人事では、良い環境は作れないと思います。結果として、集団の成果も下がってしまいます。

フリーライダーの波及性

大きな組織になると、自分は何もせずにに、他人の仕事の批判ばかりしている人が出てくることがあります。批判だけしていても給料はもらえ暮らしていくことができます。

このようなフリーライダーは、最初は1%の偏屈な人であっても、他者への影響力は高く、フリーライダーの拡大が起こる危険性があります。手抜きの同調が拡散していく危険性です。

対応策

どうすれば、社会的手抜きを抑えることができるでしょうか。

個人単位での対応

結論、良いチームは「個人」としての貢献目標と、集団としての達成責任を明確にすることで、皆が自分事化することを実現しています。

上記要因で挙げた、「評価可能性」を克服することが、社会的手抜きを抑制するという報告があります。本報告に基づけば、いかに個人の頑張りが見えて、かつ認められるような環境にするかがキーになります。

個人単位で業務を割り当てるで、貢献を評価することを可能にします。更にその貢献がどのように全体の成果に繋がるのかが理解できれば、動機づけの損失を抑えることができます。

集団単位での対応

また、集団規模で見ると、規模が大きいほど相対的に個人が感じる責任が小さくなり、手抜きが起きやすくなります。

よって、集団のサイズを小さくすることも一つの対策になります。

さらに、集団規模に関しては、集団凝集性が低い場合に社会的手抜きが起こりやすいこともわかっています。集団凝集性については以下をご参照ください。

ただし、仕事の意義や役割が不明瞭であったり、単純作業しか求められない場合には規模に関わらず手抜きが起こる余地があるので注意が必要です。

人材採用・配置・育成の観点での対応

最後に、誰もやりたくないことをやる責任感の強い人に、組織と運命共同体になってもらうことが考えられます。

組織の成果が自分にとって重要であると思えれば、組織のために尽力するためです。

今までの日本では、皆が横並びで偉くなる可能性があったために、皆が組織との運命共同体として尽力していました。

今後、組織の成長が停滞することで新規ポジションが創設されず、早期選抜に移行していくことがありえます。そうなると組織のために頑張る人の「数」は減ってしまい、より社会的手抜きを助長する可能性があります。

この数の論理に打ち勝つためには、できる限り組織のために尽力する信頼できる中間層が必要になります。選抜や報酬で報いられない分、社会的欲求・尊厳の欲求に働きかけ、組織としてその頑張りを今まで以上に認知していくことが重要になります。

なお、選抜の際には組織市民行動で学んだ通り、公平性の担保には注意が必要です。

結論

社会的手抜きは、組織のアウトプットを下げる

個人が何を頑張る必要があるかをわかりやすくする

その頑張りが組織の何に貢献しているのかを分かりやすくする。

その頑張りを組織として認める

結果、皆の自分事化が進んで手抜きをおさえることができる。

【主に学習した本】